「黒白二鼠(こくびゃくにそ)」 2008元旦
井戸の蔓(かづら)にすがれる命
底には毒蛇の口を開く
蔓をかじる黒白の
二鼠は日月のたとへにて
生死の際(きは)の時なれば
つゆの蜜こそ甘露なれ
(『法句譬喩経』より翻案)
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『法句譬喩経』とはパーリ語で記された『DHAMMA-PADA』の
漢訳『法句経』の詩句に比喩物語を付したもの。
ブッダの息吹に近い時代の言葉で記された、
日常坐臥の在り方に沿っての魂の指南書とも言える
『ダンマ・パダ』(岩波文庫『ブッダの真理のことば…』)の趣旨が、
更に活き活きと具体的な比喩で展開する。
西晉の法炬法立共譯とされる。
「黒白二鼠」のたとえのもとの趣意は、
本来目覚めた意識においては
絶体絶命たる人間の在り方にも関わらず
時の間の欲望にうつつを抜かす愚かさの指摘。
まあ、年の初めのメッセージなわけだから、
刹那の甘露に焦点をあててみた次第。
黒白の二鼠の動きを忘れずに居さえすれば
つゆの間の甘露もまた佳きかな・・・
というのが、私の翻案。
上記簡略翻案してみた詩句の流れを、同じく
七五調めかして詳述してみると以下の通り。
狂象に追はれし原野の旅人の
逃げて篭もれる古井戸は
底に口開く暴龍と
四囲に蠢(うごめ)く毒蛇にて
すがれる藤蔦見上ぐれば
黒白二匹の小鼠の
命の蔦をば齧るなり
嗚呼如何すべき旅人の
頭上に掛かれる蜂の巣の
垂るるは甘露の蜜なりき
口に受けたる滴をば
味はふ時こそ至福なれ
黒白ニ鼠とは日月の
時の比喩との謂ひなれば
龍のあぎとの閉づる間の
しばし此の世は夢のうち
(『法句譬喩経』より「黒白二鼠の喩え」)
・・・というわけで、
やはり末尾は翻案になってしまいました。
経典そのものを遵守できる私ではなさそうです。
今年もよろしく願いあげたてまつりまする・・・。
*そういえば、年々、賀状も簡略化の一途。
去年はもう少し努力と工夫があったかも。
これも又、年のならいか・・・