朝起きてFMを付けたらバッハの「
仏蘭西組曲」が流れている。
視聴者のリクエストで、「キレイなバッハの曲を…」ということらしい。
「綺麗という字が漢字で書いてあります」とアナウンサー。
以前、何かのお礼に、バッハ愛好の知人へ『平均律曲集』の楽譜を進呈したことがある。
更に付録として、薄い一冊『
アンナマグダレーナ・バッハの為のクラヴィーア曲集』。
後でうかがったら、そこの令嬢がアンナの楽譜を開いてピアノに向かい、
「綺麗ね、綺麗だね・・・」
と言って弾くのだそうだ。
『伊豆の踊り子』の中に、こんな場面があった。
主人公の学生をさして踊り子が姉に言う。
「いい人だね、いい人はいいね・・・」
すっきりと余計な装飾のない表現に、偽りのない万感の思いが篭ることが
確かにある。
そういえば、学生時代、同郷のS君が「平均律」を練習し始めた。
ピアノは初心者。
やはり同じ出身校のYさんから手ほどきを受けているのだという。
河上徹太郎が20歳からピアノを始めたという逸話に励まされたようだ。
その後、どこまで弾けるようになったかは確かめてないけれど、
彼は毎年の賀状に、同じく清冽で綺麗な言葉をしたためてくれる。