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さて先日は、一人夜櫻探訪に歩いて参りました。 まず、経ケ峰を見遥かす裁判所前が一段とよろしく、 原田甲斐の出仕の姿をしばし髣髴致しました。 Mアトリエは入口照明はついているものの既に閉店。 K平構内は正門入っての数本が例年通りに見事です。 中庭中央ではやっと宴会終了の学生グループの一団が シートを片付けている所、遠回りに自販機コーナーで ホットココアを求め、枝垂れ櫻の下でひとときの観。 北門食堂前の樹々はおそらくフルブルーム状態にて、 最高の見頃を照明のもと独占して参りました。 冷えた身体をしばし歩いたジャズバーの椅子で暖め、 ギネス2パイントと葉巻の煙で、バーテンダー氏との 静かな会話に独り観櫻会を終えました。 しかし、アッと言うまの櫻の開花、 今週は既にはらはらと路上に花弁散る趣。 その花びら降り散るパースペクティヴな路上にスキップする子供らの姿を見ると、 櫻の花片と一体化した命の様が感じられるように思われます。 三好達治の「甃(いし)のうへ」という詩が思わず口をついて出てきます。 あはれ 花びら流れ おみなごに 花びら流れ おみなごしめやかに語らひあゆみ うららかの足音 空に流れ をりふしに瞳をあげて 翳(かげ)りなきみ寺の春をすぎゆくなり み寺の甍(いらか)みどりにうるほひ 廂(ひさし)に 風鐸(ふうたく)のすがたしづかなれば ひとりなる わが身の影をあゆまする 甃(いし)のうへ 「あはれ」という語は「afare、 appare、 aware」などと音韻的に同系列の言葉を派生しつつ、「嗚呼」という感嘆詞でもあるわけです。 「しめやかに語らひ歩む」乙女たち。 石畳に響くその足音も、麗らかに空に響き流れ、 その音を追うかのように時折振り仰ぐ彼女らの眼差し。 周囲の樹々の緑を反映する御寺の甍を仰ぎ見て、 春の乙女らは過ぎ行くのですね。 御寺のひさしの四隅に釣り下げられた風鐸(寺院式鉄製風鈴)は、 僧侶の死に際して「諸行無常」の響きを奏でたというわけですが、 今はひと時の静寂の中、しばし許された我が命を見守るようです。 通り過ぎ行く春の息吹の中、自ずとただ独り 石畳の上に我が影を歩ませているのです・・・・・。 もう一つ、授業で引用した漢詩を紹介。 唐の于武陵(うぶりょう)の五言絶句「勧酒」。 図書館に明治書院の「新釈漢文大系」が見当たらないので、 細部が不安だったのですが、今や図書館なくともネット検索の時代、 昼休みに確認しました。 勧君金屈巵 満酌不須辞 花発多風雨 人生足別離 君に勧(すす)む金屈巵(きんくつし) 満酌(まんしゃく)辞するを須(もち)いず 花発(ひら)いて 風雨多し 人生別離足(た)る さて別れの時に、君よ黄金盃を傾け給え。 なみなみ注いだ杯を辞退めさるな。 花も開けば風雨に遭うし、 人生、別離がつきものゆえに。 初めの授業では資料手元になく、勝手に「須(すべから)く辞すべからず」 などと読んでいたものですから、検索後修整し、訳を付けてみました。 くだんの漢文大系も、今やネットで読めるのですよ。 「WEB漢文大系」(http://kanbun.info/) (本文・訓読のみで通釈はありませんが、余計な解釈はない方が良いかも) そう言えば、井伏鱒二の訳(『厄除け詩集』所収)がありましたね。 コノサカヅキヲ受ケテクレ ドウゾナミナミツガシテオクレ ハナニアラシノタトエモアルゾ 「サヨナラ」ダケガ人生ダ 最後の一行が余りにも有名になり、寺山修司が頻用した 「ダイセンジガケダラナヨサ」はこれを逆さまに読んだ呪文でした。 「さよならだけ」が人生でもあるまいに…という思いを籠めているとも思えますが、 読み方は人それぞれでしょう。 さて、嵐に花散るたとえのごとく、 咲く花に執着せず、散る花にも愛惜せず、 人との出会いも一期一会の覚悟。 まことに人生の学習は、猫一匹と櫻花鑑賞とで事足りる、 とは言い過ぎかな・・・ (「猫一匹」については、A.ハクスレーの『猫の教訓』参照) 于武陵は官途を捨てて書物と琴を携え各地巡歴の由。 彼が眺めた桜の風景はどんな世界だったのでしょうか。
by algosj
| 2006-04-25 12:18
| 文学
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