学生時代、心理学の英文テキストを読まされた女子学生が
"psychology"を「プシ...コ...ロジー」と発音、
教師は呆れて一言、
「サイコロジーの発音くらい高校でやってないのかね…」
教室の学生達は、その一言にドッと笑い声。
女子学生は真っ赤になって俯く・・・
僕は一人憤懣やる方ない面持ち。
出来る教師であったなら、
その語源がギリシャ語のPSYCHE(プシュケー)
であることを確認する絶好の機会でもあったろうし、
第一、ドイツ語ならば「プシヒョロギー」だろうに、
サイコロジーという発音が歴史的には訛っているのだ。
周りの学生達も、教師の反応次第で人を笑いものにする!
然し当時まだシャイな僕は、俯いた女性を助けるために
抗議する程のナイト振りを発揮することはできなかった。
葬儀参列の足先に蝶が止まったことがある。
蝶はギリシャ神話のプシュケー、魂の象徴。
死者の魂の新たな旅立ちであったのかも。
その昔、先輩同僚が奥さんを亡くされた。
月もない初夏の宵、一升瓶を提げて訪問、
文筆は達者ながら(後に作家デビュー)、
絵心には無縁の彼が、教員住宅の縁側で
ダンボール一箱の世界デッサン集を横に、
描いているのは、亡き奥さんの肖像画。
その絵を脇に茶碗酒を酌み交わしていると、
開け放った庭にヒラヒラと華やかな揚羽蝶。
何度も我々の視界を行き来するのを見つつ、
僕は一言。
「奥さんの魂が生まれ変わる宵だったんですね…」
丁度、四十九日の宵だった。
話題は「
中有(ちゅうう)」のテーマから、
ヒラヒラとヒマラヤの彼方に…。